『ポラリス』

           『ポラリス』

  誰かが言った。
  「持って行こうよ。」

  でも、ぼくはきっと、その時こう答えたんだ。
  「ぼくは、置いて行くよ。」

  それは、星の雫が深く眠った土塊に与えた魔法。

  もう充分過ぎるほど、共に過ごした。

  数々の自然の摂理を透化して、この手で、汲み取った輝ける星の雫たち。

  それは、多くの遭難者たちの頭上に輝く光。

  離れ離れになるのは、寂しいけれど。
  「それは一時なんでしょう?」

  この地上に溢れ出す色とりどりの想いを否定しないで。

  溢れ出す想いが、ぼくを駆り立てた。
  「そう、ぼくもこの世界に必要とされたのかな?」

  この道標が与えたもの。
  「全てここにおいて行こうよ。」

  それは、星の雫が深く眠った土塊に与えた魔法。
  「ぼくは、うれしかった。」

  もう充分過ぎるほど、共に過ごした。

  そして、またこの雫は誰かの心に根付き、また、この星は人を照らすから。
  「ぼくは、全ての想いを残して行くよ。」

  この地上に溢れ出す色とりどりの想いを否定しないで。

  ぼくは、手を合わせて静かに地面に横たわり、伏せて、囁いた。
  「手を離すよ。この繋がりよ。今まで、ありがとう。」

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