陰宅とは拙著 『風水住宅図鑑』 でも書いたように、
その墓のある場所と、その墓の風水が 子孫に影響を与えるとする陰宅風水は、現段階では科学的に立証されてはいません。
と述べたように、非科学的な陰宅風水であります。しかし陰宅(お墓)風水に対して、陽宅(住宅)風水はどうでしょうか。
陽宅風水における時間と方位の概念である「向」(理気)を除く、その他の地理五訣 で考える空間、巒頭(地理形勢)は環境心理学(Environmental Psychology)という実証科学の視座からは、非科学的といって片付けることはできません。
『風水住宅図鑑』 の「環境心理学と風水」(P.270)でも書きましたが、陽宅風水の培った経験則と、環境心理学の見つめる世界は非常に接近しています。
また建造物の向きである理気も、人の心理に影響すると考えれば、非科学的であるといって切り捨てるわけにはいきません。
例えば、住宅の居室には、建築基準法で定める一定の割合の、「採光に有効な開口部(窓等)」を設けなければいけません。そして、道路、公園、川などに面する開口部、これらは全て建築基準法では採光に有効な開口部として有利な措置が取られています。
また南向きに採光面積を増やし、1階部分ならば隣地境界線から約二メートル以上離れて家を建てることで、採光を多く取れるわけですが、採光を取る目的は何でしょうか?
建築学的には、換気と並び室内の衛生環境維持に欠かせない行為であり、快適な明るさや温度を得て、室内の住環境を良好にするためです。
冬は温かい太陽の光が室内の奥まで入るように、夏は強い日差しをさえぎるようにと、季節によって異なる日射角度を考慮し、採光計画が住宅には求められています。
さて、建築学から採光を取る目的を考えてみましたが、
それでは採光が快適であると感じるのは人間の心理ですが、採光が人間の心理に与える影響があるのならば、採光のための宅の向き、つまり「理気」もまた人間心理に与える影響があるということになりますよね?
今度は風水学から採光を取る目的である住宅(陽宅)の向き(理気)について、人間の心理と共に考えてみたいと思います。と言うのも、陽宅風水が環境心理学との接点や類似点があるのは人間と環境を一体に考える、人間心理にあるからです。
そして日本国内における47都道府県においても、経度緯度がそれぞれ異なり、地域ごとに日照時間(太陽や日光の光)が当然異なります。
東北方面や山陰地方の日照時間が短いですが、その中でも秋田県はワースト1位です。
さて、ここで住宅(陽宅)が太陽光を取り入れる採光(そのための向きが理気の目的の一つ)と、人間の心理に何らかの結び付きや影響がるあるのならば、環境心理学と同じく実証主義の立場に立つと仮定した陽宅風水としては、経験に由来しない概念を用いて思考したりすることを避け、採光をとる向き(理気)によって顕著にあらわれる事実のみに基づいて論証を推し進めると次のようなことがわかっています。
この日照時間が47都道府県でワースト1位の秋田県の自殺率は、平成16年で人口10万人あたり39.1%となっており、秋田県は47都道府県で自殺率に関してもワースト1位なのです。また、自殺率のワースト2位以下も同じく青森県は38.3%、岩手県でも34.6%と日照時間の短い東北地方で、自殺率も高い数値となっています。
また秋田県は自殺と結びつく原因の一つとして考えられる、うつ病患者数においても、高齢うつ病患者数は 第一位 秋田県(2008年) となっています。
日照時間と自殺率、うつ病患者数には何らかの関係が成立すると考えてもいいのではないでしょうか。
そして、うつ病などに顕著なように人間の心理のあらわれとしての病と日照時間、ひいては住宅の採光が因果関係があるということが証明できたということは、人間心理と環境を一体として捉える風水学の採光を取る目的である陽宅(住宅)の理気(向き)を非科学的であると断ずることはできない。つまり、陽宅風水の考える理気を非科学的であるといって切り捨てることはできないのです。
次回は「陽宅実務2」~風水施行編を乞うご期待。
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