『風水住宅図鑑』 紹介シリーズの最終話です。もう発売されたようなので、タイトルも変えました。
ただなんとなく、書いただけの風水コラムではなく、一つ一つが読者の認識に変わるように意図して書きました。
この本は単なる吉凶を説くためだけの本ではない仕上がりになっています。
台湾の本屋をハシゴして、日本とは比べ物にならないくらいの膨大な現代の陽宅風水の書籍を眺めながら、しばし思うのは「残念だな」ということでした。というのも、せっかく住宅における風水の考え方を講究した「陽宅」の専門書なのに、何でもゴチャ混ぜに足し算するのだけが美徳ではないからです。それらの現代における陽宅の専門書は、「理気」について「八宅派」や「玄空飛星派」の理気を、当然のように「陽宅」+「理気派(羅經派)」という校正で足し算して仕上がっています。
本書『風水住宅図鑑』 では特にこの点に留意しました。作品としての質を上げ、後世に「陽宅」の思惟と着眼点を遺すために!
形家(巒頭派)の「目に見える姿・カタチから気を読み解く」巒頭技法と、「目に見えない姿・形なきものから気を読み解く」理気技法をゴチャ混ぜに書けば、当然そこには数々の矛盾があらわれてしまいます。
そして風水初学者は無限の矛盾のメビウスの輪をループすることになってしまいます。初学者に限らず、そこでその輪から抜け出せない人たちをどのくらい見たことか。
台湾の書店で現在見出だせる数々の陽宅の専門書たち。せっかくの専門書なのに、陽宅と理気をゴチャ混ぜにして、その矛盾を抱えたままでは、もったいない気がしてならなかったのです。
もちろん、現代の名著と呼ぶべき私も監訳を務めさせていただいた『完全定本 風水大全』 は、その矛盾に気づき、事あるごとに、その説明を的確に網羅しています。改めて『完全定本 風水大全』 を読むと、流石はマスター・ロー だと感動してしまいます。
例えば、『完全定本 風水大全』 の116ページには、①巒頭から理気を看るのか、②理気から巒頭を看るのかという、どちらを主体として看法のウェイトを決めているかというスタンスにおいて、巒頭と理気の矛盾に気づき、矛盾を避けるために、玄空飛星チャートの中でも「上山下水」と呼ばれるチャートの説明で、次のように書いています。
「(上山下水チャートとなる)その家が前方にオープンスペース、後方に山があるような一般的な配置の家にとっては良くないチャートです。」
この簡潔な一言には自身の風水看法(見立て)をより明確に明らかにしています。
例えば、この「一般的な配置」という表現は、巒頭(らんとう)を意味し、それは巒頭で好まれるを「背山面水」を意図しています。つまり、「理気派」の玄空飛星チャートの理気の部分だけを信じれば、左図のような巒頭構造が、②理気から巒頭を看るの上での理想になってしまいます。しかし、ここでロー先生は「一般的な配置の家にとっては良くないチャートです」と、「上山下水」チャートそのものを宜しくないと判断することで、巒頭と理気の矛盾を防ぎ、自身の看法スタンスである、①巒頭から理気を看るを浮き彫りにしています。
もし、②理気から巒頭を看るまたは③理気しか看ないという看法ならば、どうでしょうか。仮に使用する理気を玄空飛星とすると、例えば「上山下水」チャートにとっては、家の前(立向)に山があり、家の背後(坐山)に水がある巒頭配置を理想とします(②理気から巒頭を看る)。それは、理気を主体とするために水星、山星にとって好ましく、使用用途があっていれば住人にとっても好ましいと考えます(③理気しか看ない)。
しかし、巒頭の立場に立てば、それは「背山面水」の巒頭においては、あべこべで好ましくない配置と判断しますので矛盾が生じます。
例えば、坎山離向の南向きの家を例に取ると、第五運の飛星チャートと、第七運の替星(たいせい)チャートに、そのような南向きの「上山下水」チャートは出来上がります。
宅が日照時間を長くするための南向きなのにもかかわらず、南に山があり、宅は山の北側となり山陰(山のかげ)となってしまうのです。そのような陽が遮られる住宅の配置を理想とするわけがありません。これが②理気から巒頭を看るの明らかな矛盾なのです。
日本だけでなく、台湾においてさえも、上記で述べた①~③の三つの看法に④巒頭だけ看るを加えた風水の四つの看法を全く示されていない陽宅書であり、混同しているのです。そのため、はっきりとしない立ち位置から 数限りない矛盾が本の中で展開されます。
これが私が先ほど述べた「残念だ」の意味です。
本書では、初めてこの四つの風水の見立て(看法)をはっきりと整理しました。それは最後となる風水コラム㊱で書きました。
それは、足し算ではなく、思い切って「理気」の説明を陽宅の専門書から引き算して、「巒頭」から生まれた「陽宅」について書くことで、すっきりと整合性を整えたということになります。つまり、実学主義*としての陽宅風水書であり、神秘学の分野である「理気」の一切を切り分けるように心がけ、風水と建築を再び統合させた本に仕上げました。
建築家たちが違和感を覚え、敬遠してきたこれまでの方位による理気主体の俗にいう家相と日本で呼ばれ親しんでいるものとは、異なる風水書です。私は風水と建築は一体だったというかつての歴史を遡り、現代建築を理解しようと努め、実際に住宅の施工に携わり経験を積み(私のデザイン設計した風水住宅の写真もたくさん出てきますよ~表紙にも二軒)、この本に建築家が何一つ理解ができないということがない住宅のための風水であり、風水が建築と一体の実学主義の書として『風水住宅図鑑』 を書き上げました。是非、多くの建築家に読んでいただきたいです。
*実学主義: 意味や解説。事実・経験・実践などを重視する教育思想上の立場。
もちろん、理気を軽視している訳ではなく、私はあくまでも、、①巒頭から理気を看るというスタンをもって、看法を組み立てているという自己の看法のスタンスをはっきりさせているだけです。それはロー先生に同じです。
まあ、今執筆中の『【玄空飛星派】風水全書』(仮題)で、玄空派の理気については改めて出版するので、今はとりあえず「陽宅」の基礎として、理気を引き算して『風水住宅図鑑』 を発表したことの意義である引き算の意味をぜひご一読してご理解ください。そうそれは、実と虚の乖離なのです。
この実証科学にも耐えうる巒頭部分を理気(神秘学)とゴチャ混ぜにせずに書ききるのは、私のデビュー前からの構想でした。
えっ、オマエいつ、何にデビューしたねん。(;◔ิд◔ิ) !!!
著者は俺やから、これソロ・デビューなるやん! ヽ(`△´)/
そやねん。共著のイチゴ・ケーキの時から構想してたんや〜。ヽ(`△´)/
えっ、それって抗争時代ちゃうんかい!(;◔ิд◔ิ) !!!
不毛な冗談はさておき。(笑)
私は神秘主義を否定していません。寧ろ心理面から述べれば、どちらかと言えば神秘主義者だと思っています。
ただ、それ以上に本書では科学、物理学、地球科学、史学、象徴学、心理学、環境心理学、地理学、建築学、風水の哲学といった常識を最優先させたのです。風水は学術なのだという側面をお披露目しました。
ちなみにこの羅盤は私の最新デザインの羅盤。パクられないように小さい画像でお披露目。(笑)
実際に姿カタチがあり目に見える住宅(陽宅)に対して、理気(神秘学)を足し算によってゴチャ混ぜにするのではなく、理気(神秘学)を陽宅(住宅)から引き算することにより、信じる信じないの実証不可能な世界観を差し引き、よりパブリックにクオリティーが高い、「風水学」として、いい仕事ができたと『風水住宅図鑑』 に関しては思っております。
風水の学習を志す初学者には是非、この本からはじめて欲しいという希望があります。
おっと、風水コラム㊱の紹介から書いてしまった。さて、最終話です。
『風水住宅図鑑』 風水コラムの紹介㉘~㊱!
第十三章 室内構造
風水コラム ㉘ VOC対策/シックハウス・CS対策について
陽宅で重んじられる「空気の流通」。現代ではこれに加えて、「空気の質」が問われます。
室内空気を汚染する物質は、常温で蒸発する数十種類の有機化合物(揮発性有機化合物) 群によって病気にならないためには?に答えます。
風水コラム㉙ 魔の階段と風水
人間が思い込みは、視覚化するだけではなく、既に身体を動作させる行動にも即座に結びついている。
現代科学では神経細胞(ニューロン)一個一個のレベルから発生、分化、進化のメカニズムが解明されていないことを考えると、風水を科学的ではないといって否定する理由はどこにもないのです。
蔣大鴻(しょうたいこう)原著、尹一勺(いんいっしゃく)編纂による『陽宅要訣圖説』(ようたくようけつずせつ)より、、八種類の陽宅で表現する「気」について述べています。
ある意味、「気」とは、ワインのテースティング用語の如きもの。みんな覚えて使いこなしましょう。但し、認識として自分に刻んで「気」をテースティングする実践が問われます。
風水コラム ㉛ 理想の風水住宅
長い。説明が長い。全36話のコラムの中ではぶっちぎりの最長で、11ページもあります。(笑)
鍾進添老師のもとで共に五術を研鑚する兄弟子・沈順従師兄のエピソードつき。師兄の理想の風水住宅を鍾進添老師自ら鑑定をするという贅沢な内容。
風水界における人間国宝的存在の鑑定書つきの家に私も住みたい。(´∩`。)グスン
外家巒頭と呼ばれる自然界の理(ことわり)を読み解こうと試み続ける地理風水のエッセンスを住宅に適応させるための知恵として、できるだけ類型化して、本書では住宅にとって有用なものを私の経験則から整理しました。陽宅のモトとなる地理風水ではどのようなものが重要視されたのかを説明。
風水コラム㉝ 自分をもっと知ろう!
サツが一人来たからって。いや、風水の悪い影響である煞(さつ)が一つあるからといって、 それで「引っ越さなくてはいけない」とまで短絡的に考えるよりも、実際の現象として自分の日常に起きていることを冷静に分析し、その影響が自分にとって問題のないものであると判断したのなら、深刻に考える必要もなく引っ越す必要もないことを説明。
しかし言わんとする事は、人間関係であり、因縁であります。正しい人間関係を持つことが栄光にいたるための方法だということです。そして、運の良し悪しにかかわらず読書(勉強)したものは、後で必ず役に立つ。
風水コラム ㉟ 現代住宅事情と宅の坐向
「法」の施行が家の土台敷設から建築建造まで大きな影響を与え、この影響が本書を通じて述べている空間が受ける社会現象の影響であり、「空間=権力によって支配されている領域」なのです。そして社会空間は成り立っている。
坐向決定に必要不可欠な建築基準法などの説明を列挙。風水を読み解くのに、建築と風水という垣根はなく、また法と風水にも垣根はなく、その影響は及んでいるのです。
風水を学ぶ者は「空間に作用する影響」(風水)を読み解くべきであり、法を理解していないのならば陽宅を理解していないのと同じなのです。そして、タワーマンションや、デザインマンションの坐向を取るのには、現代の社会生活を理解することが大事です。ベランダは東西南北自在に配されているのですから採光だけを起点に坐向を取ることはできません。
風水コラム ㊱ 巒頭から理気を看るのか?理気から巒頭を看るのか?
今回のコラムの冒頭で説明をしましたが、要点をまとめると。
巒頭と理気の関係は、①巒頭から理気を看ている、②理気から巒頭を看ているの二つの因果関係による思惟があり、つまるところどちらをより重要視するかで判断が分かれるので、注意が必要です。
また風水の看法においては、③巒頭だけで判断する。④理気だけで判断するなど、それぞれの学派による判断基準が異なります。
さて長く続きましたが、今回で『風水住宅図鑑』 の紹介を終えます。この本の紹介には、まだ続きが一話ありますが、それはまた後に発表いたします。
風水コラム以外にも、各章の頭には懇切丁寧な説明をして、風水の難解な概念の説明を心がけました。
是非、私の力作を手にとって読んで気に入れば買ってくださいませ。
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