張明彦氏の第二弾 『チベット密教の秘密と秘術』(太玄社) の発売日が8月20日で確定し、献本をたくさん頂きました。版元の太玄社に感謝であります。
6月に発刊された張明彦氏の仙道怪奇憚とも呼べる『仙道房中術の悟り』は、非常に好評な売れ行きで出版に係わった者としてうれしい限りです。
ただ表紙がカッパの黄桜で規制がかかり、置いてくれない本屋もあるとか。これは版元としても誤算でしょうね。(笑)
しかし、発売から二ヶ月を経てAmazonでこの順位は好評と言っても過言ではないでしょう。歴史・時代小説のジャンルで奮闘しております。ペンは剣よりも強し、エロはペンよりも強し(。・Д・。)、と言ったところでしょうか。(左図8月14日17時)
さて、第二弾は張明彦氏の研究テーマの一つでもある「後期密教」を仙道の視点なども交えながら、わかりやすく詳細解説を施した一般書に位置づけられる作品です。広く多くの人に読んで頂ければ幸いであります。日本ではあまり知られていないチベット密教最大の禁忌の一つ「殺佛」という部分についても紹介されています。輪廻転生を教義とするチベット密教にあって物騒な内容です。その内容を知りたければ、発売日に本屋さんに行こう!
えっ、また本屋に置いてないかも知れないだって!(o゚Д゚o)
大丈夫!もう二度と同じあやまちを版元はしません。今回は三分の二も帯で隠されていますから。もう大丈夫!無修正を修正してきた感じです。(笑)
『チベット密教の秘密と秘術』(太玄社) の発刊によせて、あとがきを寄贈しましたので、ここに掲載いたします。以下、本書の「発刊に寄せて」より。
インドのダラムサラで、十数万人からなるチベット難民たちが暮らす「チベット人民機構」は 以前「チベット亡命政府」と呼ばれていました。日本人の多くは、こちらの呼称のほうが馴染みがあるのではないでしょうか。
この亡命政府は、中国本土のチベット自治区とは別に、「チベット人民機構」は1959年の チベット動乱によるダライ・ラマ 14 世のインド亡命によって発足しました。ダライ・ラマ 14 世は 同政府の長であり、チベット仏教のゲルク派最高位の仏教博士号を持つ僧侶でもあります。
また、 チベットの自治権、チベット人に対する中国共産党政府による人権侵害行為についての批判活動 を世界規模で展開し、政教両面において指導的立場からチベット文化を広く世に伝える活動によって、長らく鎖国状態にありその全貌を窺い知ることができなかったチベット及びチベット密教 が広く世界中の関心を集めることに寄与しています。
日本とチベット密教のかかわりの詳細は、日本人として初めてチベットへの入国を果たした河口慧海(1866〜1945年)による『西蔵旅行記』を読んでもらいたいのですが、彼は、チ ベットが鎖国政策をしているダライ・ラマ 13 世の時代である1901年(明治 34 年)3月にチベットの首府ラサに中国人と偽って到達し、セラ寺の大学にはチベット人僧と偽って入学を許され チベット仏教を学びました。
彼はそこで大部のチベット語仏典を蒐集し、大量の仏典、民俗資料 や植物標本の多くを持ち帰り、現在は東北大学大学院文学研究科によって管理されています。
日本への仏教伝来は、一般的な説では538年に百済より公伝したとあります。それからすで に1500年あまりが経ちますが、仏教の経・論・律(三蔵)をまとめるため比丘たちが集まっ て釈迦の教えを互いの記憶から確認し合いながら、合議のうえで仏典を編集する会議である 「結集」(けつじゅう)が部派の記録では三回は行われたとあることからも、釈迦の教えもまた時間と共に、解 釈が枝分かれし、さまざまな宗派を生んだことは歴史から明らかです。
※仏教新発見・第27号『相国寺・金閣寺・銀閣寺』発行:朝日新聞社よりイラスト引用
日本国内の仏教を区分するだけでも、1940年の宗教団体法公布以前には 13 宗 56 派が公認さ れていました。 13 宗とは、華厳宗、法相宗、律宗、真言宗、天台宗、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗、 融通念仏宗、時宗、曹洞宗、臨済宗、黄檗宗のことで、これら伝統仏教の 13 宗の系譜はいずれも 現代に引き継がれています。
また、世界に現存する仏教は、中国、韓国、日本、モンゴル、チベット、ベトナムなど北方の 国々に伝えられてきた大乗の教義による「北伝仏教」(北方仏教)と、上座部の伝統教義に従う スリランカ、ミャンマー、タイ、カンボジア、ラオスなど南方の国々に現存する「南伝仏教」 (南方仏教)の二つに大別して考えられています。日本に伝わり現代でも継続している 13 宗はす べて北伝仏教に分類されています。
本書でも、「チベット密教」(チベット仏教)を北伝、南伝という二つの区別に従い、北伝に分 類してしまうのは、その教えの性質を考慮して、以下の三つの点で無理があるように思います。
一つめは、チベット密教は、七世紀から十三世紀にかけてインドから直接、仏教を取り入れた ので、インド仏教の伝統が途絶える寸前の時代に伝来した後期密教の要素を色濃く残しているこ とです。それはチベット密教の特徴として、各宗派におけるインド後期密教の流れを汲む「無上 ヨーガ・タントラ」の実践というかたちで顕われています。
中国に伝わった密教は唐密、日本に伝わったものは東密(真言宗)、台密(天台宗)と呼ばれますが、後期密教の流れを汲む「無上ヨーガ・タントラ」という点において、西密(チベット密教)は日本や中国の密教と異なるのです。
二つめは、独自のチベット語訳の大蔵経を所依(しょえ)とする仏教教義体系を持ち、漢訳経典に依拠する北伝仏教とは異なる点です。
三つめは、チベット密教は、初期から最終期までのインド仏教とチベット現地のボン教(苯教)までをも広く包含する総合仏教であるという点です。
現在、日本でも大学機関においてチベット語訳の大蔵経の翻訳をはじめ、後期密教経典の研究 が進んできています。しかしチベット密教の最大の特徴である「無上ヨーガ・タントラ」は広大 な身体論でもあり、実践によって体得していくものであるため、かつてのチベットの訳経師たち である、マルパ(カギュ派開祖)、ドルジェタクらが実践家としても優秀な僧侶であったように研究と実践の二つが求められています。それは、無上ヨーガ・タントラを学ぶに、灌頂(かんじょう)を受けさ せずに学ばせたラマと弟子は地獄に落ちるとツォンカパが警告していることからも明らかです。
本書は研究書、実践書という体裁よりは一般書として、チベット密教とは何かということに迫 っています。一人の人間がこれだけ膨大な歴史を精査してまとめる作業は容易ではなく、当然歴史という過去の題材と時間に対して個人的な史観を抜きにして語ることはできなかったと思いますが、縦横無尽に読み解き整備したという一点において驚きを隠せません。
個人的史観の根拠を出典まで遡り、一つひとつに引用や注をつけていってしまうと、本書がねらう一般書という範疇ではなく学術論文になってしまいかねません。そのため、説明不足の箇所や、理論的背景などが 理解しづらいところもあるかもしれませんが、それは本書の意図するものではなかったことを追記しておきます。
張家と縁故あって、台湾の員林に行く度に張明彦氏は私のために膨大な後期密教資料や原典を用意してくださり、また貴重な口頭での密教講義をしてくださいました。私はいつしか明彦氏の 仙道・密教研究の世界に引き込まれていきました。そこで「チベット密教の入門書」をぜひ書いてほしいとお願いしたのが本書のはじまりです。
張明彦氏による本書の目的は、「死後の世界に対する恐怖は決して古人の迷信ではない」とい うことをチベット密教から、その本源たる「死後」の謎に迫ろうとしている点にあります。
本書が仏教関係者及びヨガ、仙道に興味をもつ人たちから実践家たちまで幅広く多くの人たちに読んでいただけることを熱望し、謎のヴェールに包まれた後期密教、そして死後とは何かを多 くの人々が共に考えることで、チベットの平和的な未来、人類の未来、に役立つものとして進展 することを願っております。
2015年4月 14 日 山道帰一
CM ただいま品切れとなっております拙著『風水住宅図鑑』も御蔭様で8月20日に増刷されます。
こちらも引き続き、皆様にご愛顧頂けますように、よろしくお願い申し上げます。
♪(・ω・)ノ
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