いよいよ発売されました『玄空飛星派風水大全』。
ここでは、玄空飛星の専門書であり、全ページフルカラーで648ページの本書使用方法マニュアルを公開したいと思います。
本書『玄空飛星派風水大全』を攻略するにあたって、各章の特徴とともに、読者のレベルに合わせた学習の方法となる攻略法を各章ごとに提案してみたいと思います。
第3章 玄空飛星派風水とは
2 玄空飛星派の技法
(5)坐向(ざこう)の取り方
ここで風水の考える坐向の基準を明確にしておきましょう。
三大発明という言葉を多くの人が聞いたことがあると思います。
三大発明
15~16世紀、ヨーロッパに大きな社会的変革をもたらした三つの発明。火薬・羅針盤・活版印刷術をさすが、実際にはいずれも中国伝来のものを改良・実用化したもの。
三つの発明の中で、「羅針盤」は、磁石の作用を用いて方位を知るための道具である「方位磁針」です。「方位磁石」「コンパス」「磁気コンパス」とも呼ばれ、そして単に「羅盤」とも呼ばれます。
いわゆる、風水師が使用する「羅盤」とは、磁石の作用を用いて方位を知るための道具である「方位磁石」「コンパス」「磁気コンパス」を指すことが広義の意味です。
そして、この羅盤は諸説はありますが、実際に方位を示す目的で作られたのが、3世紀に入ってからの「指南魚」として、魏の時代(220年~265年)以降には確実に使用されていました。
指南魚は、紙、印刷、火薬とともに、中国の四大発明とされている羅針盤の元祖とされます。
諸説の一つには、紀元前3世紀には建物を建てる際に「磁北」を基準とする「地盤二十四山」は用いられていたともいわれています。
本書でも説明していますが、「地盤二十四山」の発明は、唐代末期の風水師・楊筠松(よういんしょう、834〜900年)の弟子・曾文辿(そうぶんてん)による『青囊序』(せいのうじょ)にも記されています。(69ページ参照)
つまり、風水では「磁北」を基準に「羅盤」を用いてきたのが習わしであり、風水師たちが「羅盤」(方位磁石)を使用する目的でもあります。
ここで注意が必要です。ほぼすべての地図の座標は「真北」(しんぽく)に基づいて作られています。その中でも正角円筒図法と呼ばれる「真北」を常に上に出来るメルカトル図法は、1569年にフランドル(現ベルギー)出身の地理学者ゲラルドゥス・メルカトルがデュースブルク(現ドイツ)で発表した地図です。
「真北」を常に上に出来る地図の誕生以前から、風水師たちは既に「羅盤」(羅針盤)を用いて建物を建てるさい、地形や方位の風水の吉凶を判断していました。
もちろん、風水師たちが航海に出て出発地と目的地との間に直線を引いて経線となす角度(舵角)を測り、方位磁針を見ながら常にその角度へ進むようにして、目的地に到着する航程線(等角航路)と呼ばれるコースを取り、舵取りが容易にするために「羅盤」(羅針盤)を用いてきた冒険家や船乗りではなかったのは言うまでもないでしょう。それ、もう職業違うから。(笑)風水は陰陽宅となる空間の坐向(理気)を測定するのが生業です。
北半球では北極星の方向とほぼ同じである「真北」ですが、地磁気の水平分力の向き「磁北」での測定を基準にした「地盤」を左右に7.5度ずらした「天盤」(子午線が磁北より右に傾いている東偏)と「人盤」(子午線が磁北より左に傾いている西偏)が存在します。
この三合派で用いられる「人盤」と「天盤」ですが、この二つの盤が存在することによって、三合派は「時間の変化」する概念をあらわしています。そう、実際には三合派は「時間」を考慮してていることが判明するのです。
と言いますのも、方位磁石が北を向くことから分かるように地球には磁場があります。この磁場を「地磁気」と呼んでいます。地磁気は、地球内部の核の対流運動、太陽活動との関わりの他、地殻の活動など様々な地球環境の変動に応じて、刻々と変化を続けています。これを地磁気の「永年変化」と呼んでいます。
例えば、磁石の針が示す方向「地磁気の偏角」は現在では、東京は西偏7度ですが、50年前はほぼ西偏6度、100年前はほぼ西偏4度です。風水鑑定をしたことがある人ならばわかることだと思いますが、1度ずれたら坐向が変わる測定を想像してみてください。
「永年変化」とは「時間の経過とともに地磁気が変化すること」であり、地磁気が変化すれば「磁北」も変化するのであり、それは「時間が経てば坐向」が変わるということを意味しています。坐向(理気)が変われば象意が変わるのは言うまでもありません。
つまり、しばし三合派には三元派のような「二元八運」「三元九運」といった「時間が変化する概念や規則」がないと考えられがちですが、それは間違いです。三合派が地盤を用いて「磁北」を基準とした時点で、「時間の変化」は考慮されているのです。
それは地磁気が時間の経過とともに変化する「永年変化」から明らかです。「磁北」を基準とするということは地磁気を計測するのであり、「永年変化」に顕著なように、「時間が変化する概念」を既に含んでいるということなのです。
例えば、左の鑑定例は150年以上前の建物だが、「永年変化」を考慮することによって、この空間で実際に起きた事象、実際の史実と符合します。逆に考慮しなければ符合しない。
(参考:鑑定例で使用した技法は三元派の玄空大卦)
三合派、三元派問わず「風水」では、磁北を基準(子午線)として使用し、そして磁北を使用した時点で、「永年変化」(時間の変化)は考慮するのです。また、その証左となっているのが、『玄空飛星派風水大全』の磁北基準によって風水鑑定した第7章風水鑑定21ケースが論より証拠の実例でもあります。
ここでまとめると、坐向の取り方の「基準」は非常に重要です。まず、はっきりと明確にしなくてはいけないこととして、
「風水」で坐向を取る基準は、磁北(磁気子午線)であり、真北(真の子午線)ではない
ということです。
そして、本書の第三章の「地図上で坐向を取る方法」(133ページ) でも詳しく書いていますが、地図から坐向を取る際は、真北と地磁気の北(磁北)との差である「偏角」を正しく考慮しなくてはいけません。そして、古い建物の過去の時代を鑑定したいのならばその時代の「永年変化」も考慮しなければいけません。磁北を基準とする限り、単純に現在の磁北を用いて古い建物を鑑定するのならば、その当時の過去の時代を正しく鑑定できません。
また「偏角」は地域によって異なりますので、風水鑑定によって坐向を計測する際の地域の「偏角」データを国土地理院からダウンロードしておきましょう。
【補足】
時間の経過によって磁場変動をする「永年変化」は、地磁気の変化であり、磁北(磁気子午線)を基準とする「地盤二十四山」(一区分15度)を主地とする風水流派だけではなく、上図の例で挙げた三元派「玄空大卦」のように「外盤六十四卦」(一区分5.625度)のように磁北(磁気子午線)を基軸にする理気学派すべてに共通する「時間の変化」することからの影響です。
「永年変化」に見られる地磁気の変化、そして坐向が変わるということが、理気学派の中でも一つの区分の度数が小さいものほど、その時間軸の変化は短い時間の経過でも顕著にあらわれます。例えば、一つの区分が5.625度という「外盤六十四卦」の区切りによって坐向を取る「玄空大卦」おおよそ1~5度「永年変化」すれば、坐向が変わるということであり、その空間の象意は全く別なものになります。
分金線が単純に「外盤六十四卦」の一つの区分のど真ん中にあったとしも、2.8125度以上「永年変化」によって磁気が変われば全く別の坐向ということであり、約100年前に建てられた宅は、現代とは違う坐向だったということです。
面白いことに、三合派の技法として代表格の理気技法である「生旺墓水法」の方位区分は双山五行で12区分で一つの方位区分が30度と考えている人が多いでしょう。もっともこの技法「生旺墓水法」自体、日本で正しく教えている人を見たことがないですが。(笑)
しかし、この三合派の代表格の理気技法ですら世間で知られているのはその表層にすぎずに、明末の祟禎年間の1642年に名地師と呼ばれた某流派の掌門によって伝えられ、3年前に初めてその資料が香港で公開されましたが、その資料では「生旺墓水法」の双山五行による十二支方位ではなく、使用されていた方位区分は穿山七十二龍の天地盤でした。(左図参照のこと)
つまり、真(より完成された)の「生旺墓水法」では、穿山七十二龍の天盤と地盤を用いて、一つの方位区分は5度であり、先の「玄空大卦」よりも細かく、もっと「永年変化」によって坐向が変わりやすいということになります。
一つの方位区分の度数が小さくなればなるほど、より短い時間の変化を考慮しているということでもあります。
ちなみに、上図のその古典の内容を和訳してまとめると、穿山七十二龍の方位区分である一つの方位区分が5度単位で象意があるということになります。
左図 Copyright © 山道帰一 All Rights Reserved(笑)
この様に三合派はものすごく「時間の変化」によって象意が変わることに留意していたということです。
そう、真の「生旺墓水法」とは、一つの方位区分が5度単位である穿山七十二龍によって坐向を取るのです。
(参考:鑑定例で使用した技法は三合派の生旺墓水法)
他にも、「乾坤國寶」と呼ばれる水法は龍門八局水法とも呼ばれ、その方位区分は八卦の一区分45度であると考えられがちですが、真(より完成された)の「乾坤國寶」では、「変局」と呼ばれる、八卦の間にできる中間地帯に対して「兼」という概念で、より厳密に坐向を定める方法があり、百二十分金(一区分3度)という精緻な方位区分と判断を使用します。
また、八卦の区分しか用いない「乾坤國寶」ならば、地盤二十四山方位によって割り出す「三曜煞」、「正竅位」、「副去口」、「庫池位」なども用いていないということですし、それらの正確な方位が割り出せません。これらを用いなければ格局が取れません。それでは、あまりにも拙いただの「乾坤國寶」の真似事と言えましょう。
さらに突っ込めば、「乾坤國寶」には、独特の時間軸をも考慮します。
「元」(大運)と「運」(小運)よりも、小さい単位の更に小さい「運」で、五子運と呼ばれます。
六十甲子の一循環内に十二支を一つの単位とし、「子」からはじまる12年を一つの単位とし、六十甲子に五つの区分を設け、五行を配合した運があります。
おっと、話が長くなりましたが、まとめとしては「永年変化」による地磁気の変化、それは坐向の変化を起こし、年月を経て、その鑑定対象となる空間は別な象意になるという、当たり前の現象を説明しました。
まあ、そりゃあそうだよね。永遠と続くいい家なんてあるわけないよね。時間の変化の影響を空間が受けないなんてことはあり得ない。それは「永年変化」に顕著である。
だから、擇日によって時間と空間の関係を読み解いていく必要もあるのです。この空間(地利)・時間(天時)・人間(人和)三つの関連性を読み解くのが真の風水でもあります。存在(人間)と時間、存在(人間)と空間、時間と空間を読み解いてこそ風水なのです。
「存在と時間」が哲学となり得て、そして「存在(人間)と空間」が環境心理学とはなり得ても、存在(人間)、時間、空間の三つの関連性を追求しない限り、総合的な風水とはなり得ないのです。
さて、ポイントとしては
一つの方位区分の度数が小さくなればなるほど
より短い時間の変化を考慮している
ということでもあります。磁北基準(磁気子午線)では1度という「磁気の変化」に「時間の変化」を見つめているのです(永年変化)。
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