最近、真剣に青茶文化を正しく日本へ伝播することについて考えている。たまには、茶人としての山道もブログに書いてみたいのである。(。◕ฺˇε ˇ◕ฺ。)
まず、青茶とは何かと言うと、発酵度の程度の定義上では、半発酵とされるお茶である。実際は、発酵を緑茶のようにすぐに止めてしまう場合も有り、発酵度は15%~70%と幅広いため、ひとえに青茶を発酵度から定義するのが難しい。
六大茶類
1978年に中国安徽省の安徽農業大学の陳椽教授によって中国茶は緑茶、白茶、黄茶、黒茶、青茶、紅茶、の6種に区分され六大茶類として有名になったが、今日ではこれにジャスミン茶などの香り付やブレンドなどの意味合いを持たせた花茶を加えた7種の区分が最もポピュラーな分類方法となった。この区分は茶湯や茶葉の色合いによる定義とされるが、烏龍茶に区分される青茶の茶葉や茶湯が青いわけではない。
緑茶と青茶
中国語を勉強したことの有る人にとって、「青」が何を意味するかは、ご存知のことだと思う。そう、中国語の青とは日本語の「緑」の意味である。では、日本語の「青」とは中国では、どのように表記されるかと言えば「藍」という字義があてられる。日本的な感覚での色彩では、中国人の言う「緑」を黄緑、「青」を濃い緑と定義できるだろう。緑茶と青茶の違いは製茶方法の違いに顕著である。
日本の緑茶のほとんどは、発酵させない不発酵緑茶で、製法としては、蒸した後発酵を止め、炒る。炒る方法の製法は、釜炒り製法もあるが、一般には日本茶とは蒸し製法の緑茶のことをいう。
烏龍茶の製法
緑茶のそれに対して、青茶、とりわけ烏龍茶の製法は複雑である。まず、摘み取った茶葉を日光萎凋(いちょう)、室内萎凋、撹拌(かくはん)、殺青(さっせい)、 揉捻(じゅうねん)、包揉(ほうじゅう)、烘焙(こうばい)などと実に様々な工程を経る。茶葉を一芯二葉、または三葉で、二枚~三枚の若葉のついた芽を晴れた日に茶摘みする。その後、萎凋という行程に移る。
萎凋
萎凋とは、摘み取った茶葉の水分を蒸発させ、しおれさせること。茶葉を重ならないように、屋外で天日に当ててしおれさせるのを日光萎凋という。また、室内で冷房によって温度コントロールし、茶葉の水分を蒸発させるのを室内萎凋という。例えば、凍頂烏龍茶は、日光萎凋と室内萎凋の両方を行うことによって、味の輪郭を作っている。
撹拌
茶葉は茶摘した時から時間と供に、徐々に自然発酵を始めるため、室内で竹の籠などに入れて茶葉を揺すって攪拌し、酸化酵素の働きを止める。萎凋と撹拌はとりわけ、テースティングの際に見きわめ最も留意しなくてはならない項目である。この二つの行程で味の輪郭は形成されると言っても過言ではない。
殺青
発酵を止めるために茶葉に火を通し、乾燥させる。そのため、単に乾燥とも呼ぶ。この時間が足りないと青臭い香りの烏龍茶になる。長時間やり過ぎると、茶葉が焦げてしまう乾燥機を使い茶葉の水分を取り除く。
揉捻
乾燥機から出てきた茶葉を揉捻機や手で揉んで整形する。この作業で細胞組織を破壊して含有成分を浸出しやすくして水分の均一化をする。この段階で、茶葉を半球形に包揉し丸めていない茶葉を毛茶と呼ぶ。左写真の左:山道
包揉
布で茶葉を包み均等に力を加え半球状の形状にする。包揉の回数に関しては、茶師により様々だが、丁寧なものは茶葉を布から取り出し、散らして、再び包み均等に力を加える整形作業を10回以上は繰り返す。布揉ともいう。
烘焙
最後の仕上げである85度から95度ほどの温度の火で茶葉を焙煎する作業。茶葉のに含まれるタンニンが石綿のように飛び、茶葉から苦味が消え、ほんのりとした甘さが醸し出される。一般的に12時間から15時間を二セットから三セット繰り返す。
青茶のお茶
白茶より酸化発酵を進め、発酵完了前に熱を加えて発酵を止めた半発酵の烏龍茶と呼ばれるカテゴリーには実に様々な有名なお茶が有り、産地や品種による区分けで表すと分かりやすいかもしれない。
品種 茶名
青心烏龍: 文山包種茶(台湾)、高山烏龍茶(台湾)、梨山茶(台湾)、凍頂烏龍茶(台湾)
鉄観音: 安渓鉄観音(中国)、木柵鐵觀音(台湾)
黄木棪: 黄金桂(中国)
鳳凰水仙: 鳳凰単叢(中国)
金佛種: 金佛(中国)
岩茶種: 武夷岩茶(中国)、大紅袍(中国)
青心大冇(せいしんたいよう):東方美人(台湾)
四季春: 四季春茶(台湾)
また、岩茶などの特殊な野生茶やそれに順ずるお茶は、製茶行程が全く異なる。ひとえに、青茶と言っても奥が深いのである。実際、青心烏龍品種に属するお茶の一つである高山系烏龍茶を例に挙げると、産地の違いや市場でのブランド化した名前も含めて、以下のようなものが有る。これらは、厳密な産地の違いで区分けされるべきである。
大禹嶺 高山烏龍茶 <産地>台湾南投縣仁愛郷榮興村大禹嶺
梨山茶 <産地>台湾台中縣和平郷梨山村
凍頂烏龍茶 <産地>台湾南投縣鹿谷郷小半天
梅山 高山烏龍茶 <産地>台湾嘉義縣梅山郷
杉林溪 高山烏龍茶 <産地>台湾南投縣竹山鎮大鞍里
文山烏龍茶 <産地>台湾台北縣坪林郷大林村
テースティングを行う上で、産地と言う区分けは更なる細かい区分が要求される。それは、畑が一区画違えば、大地の土質の違いから日のあたり具合におけるまで、様々な環境の違いによって、育つ味は全て異なる。それは、品種が同じだからと言う問題ではない。ワイン文化にみられるテロワール(土壌と風土)の違いである。
清品茶房 茶通
日本では、烏龍茶に関してテロワール(土壌と風土)の違いにおける研究やあくなきテースティングの追及が全く行われていない。そのため、青茶文化を上滑りにしか捉えられない日本での状況を嘆き、山道は一人の茶人として2002年京都で、「茶通」を立ち上げ、台湾茶の普及に努め始めた。それが、今の広尾の「清品茶房 茶通」に繋がっている。
例えば、茶通では台湾嘉義縣梅山郷の広範な範囲の中にもテロワール(土壌と風土)を重視するため、厳密な地域区分とテースティングの違いを紹介し続けている。代表的なのは、以下の四地域である。
梅山 高山烏龍茶 <産地>台湾嘉義縣梅山郷瑞里村
梅山 高山烏龍茶 <産地>台湾嘉義縣梅山郷太和村
梅山 高山烏龍茶 <産地>台湾嘉義縣梅山郷龍眼村
梅山 高山烏龍茶 <産地>台湾嘉義縣梅山郷瑞峰村大窯茶園
「梅山烏龍茶」には、とりわけ厳密な地域区分を設けなければ其の味の多様性のために、再現性の有るテースティングを愉しめない。私は自分の足で(車使いましたが)、梅山郷に何度も行き茶園を巡っては調査した。
日本で茶業を営んでいて、悲しくなるのが、あまりにも産地偽装品が多すぎる。本物の茶葉と触れ合い、その味を覚えてこそ、識別可能なテースティング能力が向上する。しかし、初めから飲んでいたのが産地偽装品で、焙煎時に砂糖やステビアたっぷりの味に慣れてしまえば、本当の茶葉と出会ってもそれが本物だと識別できなくなってしまう。
識別するコツは、何煎目まで淹れられるかでわかる。高山烏龍茶系統ならば、30煎目まではがんばってもらいたい。そして、その味と香りの変化の過程を追えば、不自然なものは二煎目ですぐわかるだろう。
テースティング
お茶は嗜好品であり、自然の中で育った茶葉のテースティング世界は、一種の自然探求のごとき愉しみがある。
しかし、スタートから間違えた味を認識するのでは、烏龍茶のテースティング世界を追及するうえでは、何の意味も無い。
お茶の買い付けは非常に難しい、近年では産地自体で、茶葉をヴェトナムや中国のどこかもわからない地域でお茶が作られ、出荷されるときにはブランド名の入ったラベルのみが付けられている現状を見ると、何ともいえない気分である。お茶屋が好き好んでお客さんの生き馬の目を抜くというよりは、買い付けている時点で間違っている場合が大半なのだろう。
それだけに、茶行に係わる者達のテースティング能力は大事だ。また、テースティングは、本当に愉しい。とりわけ、高山茶のように高海抜地帯で育った山の茶は高山気を沢山含み、気という観点から非常に楽しめる。私は青茶を気のテースティングとして愉しんでいる。ちなみに、山道は日本国内で唯一、台湾行政府茶業改良場発行の製茶師の資格を持っている。国家資格です。写真は其の研修風景。
私の製茶における師匠である廖塘華老師のような達人と一緒にテースティングしているとよくわかる事が有る。以前、私が台湾行政府茶業改良場にて、研修員として茶葉を作っていたときに、自分で作った茶葉をテースティングしてもらったときの感想を聞いて、度肝を抜かれたことがあった。
廖さん:「ああ、萎凋している時にパラパラと雨が降り出してきたね。
山道が慌てて、茶葉を中央にまとめて、家屋にビニールシートごと無理して、
引きずって、そのままの状態で5分ほど放置して様子を見て雨が止まないから、
また茶葉を広げる。その時の作業が荒かったね、茶葉が積水してしまった。
苦味が若干増したね。」
山道:「おっしゃるとおりです!確かに、作業自体かなり慌ててたので、
荒かったと思います。何でわかるの?」
二枚から三枚の葉と一本の茎で摘まれる茶葉は、積水と呼ばれる味にならない様に、丁寧に茎を折らないように茶葉を取り扱わなくてはならない。萎凋の段階で茎が折れるとその後の行程のなかでも、茎に含まれた水分を葉が吸い上げるため、茎が折れることで味が大きく変わってしまうのである。
テースティングとは、探求に他ならない。それは、茶葉が生まれ育って行く過程まで回帰する。そして、茶葉という媒介を通じて限りない自然の探求を愉しむ。青茶のテースティングとは、まるで小さな旅のようにも感じる。とりわけ、青茶は其の香りが素晴らしく、其の香りに何とも癒されてしまうのである。そのため、台湾茶芸では青茶の香りを聞く、聞口杯にまず茶湯を注ぎ、それから杯に移して飲む。その時、聞口杯に残った香りを愉しむのである。香りは何段階にも別れ変化し、変化を追うことで一歩一歩と現実と遊離する感覚が楽しめる。
櫻とお茶
茶通で開催する毎年恒例の「櫻とお茶」の花見イベントでは、ぼくが功夫茶と農夫茶でお茶を淹れるので、良かったら、遊びに来てね。今年は、3月28日(土)開催予定です。詳しいことは、茶通にお問い合わせしてください。
ちなみに、桜を見ながら飲むのに最もお勧めのお茶は梅山郷太和村の梅山高山烏龍茶です。ほのかな櫻を感じさせる味が、桜を見ながら飲むと何倍にも感性が高まり、櫻をこのお茶から感じてしまいます。
お茶と作法
茶通では、もっとお茶を愉しむために、作法を勉強したいという人たちから要望が多いです。しかし・・・
「どうせ、山道がこういう講師をしたら、五術とか風水の話で終わるんだろ?」
「そんなのはイヤ~」
というリクエストに応えて、講師の泡茶師Peru先生をお招きして、清品茶房 茶通で茶芸教室を開催いたします。
基礎の泡茶講座が四回で終了する予定です。詳しくは、茶通にお問い合わせしてください。実際にお茶淹れてみることから初め、ペルーさんの解釈によるお茶の愉しみと世界を実演します。
<泡茶師Peru先生の泡茶講座>
4月4日(土) 14:00~16:00(2時間) 第一回
16:30~18:30(2時間) 第一回
4月18日(土) 14:00~16:00(2時間) 第二回
16:30~18:30(2時間) 第二回
5月2日(土) 14:00~16:00(2時間) 第三回
16:30~18:30(2時間) 第三回
5月16日(土) 14:00~16:00(2時間) 第四回
16:30~18:30(2時間) 第四回
興味が有る人は、是非、美人泡茶師の講座で茶芸を勉強してみてください。ぼくも、たまに皆さんが淹れたお茶を「まずい!」と辛口の批評をしに顔を出しますね。(´^ิ益^ิ`)
「青茶文化を考える」の第一回目は、こんな感じですね。結構長くなっちゃったな。昨日の「凍頂烏龍茶」テースティング大会の内容も、書きたかったが・・・長くなりすぎるので、また今度書きます。というか、茶通スタッフが茶通ブログで書くべし。
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