今月の1月20日に『玄空飛星派風水大全』が発売されます。
自著としては初の理気の専門書であり、全ページフルカラーで648ページのハードカバーとなっています。
この本をご紹介するにあたって、『玄空飛星派風水大全』の18ページある「エピローグ」から順次掲載いたします。
時代は変わって
実践経験に基づく経験則のみで自然界の森羅万象をすべて読み解くことは不可能です。玄空飛星派一つ取ってみても、三元九運、つまり180年を生き、すべての元運から経験則を求められる人はいないからです。
人は自然界から垣間見る法則に照らし、理論を構築してこそはじめて実践を推し進めることができるのです。
風水理論の大部分は、さまざまな法則性から成り立ち、その膨大なロジックを構築するのに至る思考の過程などは古典によって言及され、時にそれは大いなるヒントの断片だったり、読む者に知恵の試練を投げ与えてきたりします。
実際に風水古典籍で、本書のようにすべてのロジックを事細かく分解し、背景を精査し、説明を加え、解説しようと試みているものはそうそう存在しません。そういった古典が存在しないため、本書ではたくさんの古典を読み解き、引用元を丁寧に書き記しているのです。
そうした意味において、本書は一般書ではなく専門書であり、多くの読者にとって難解であることは想像に難くないのですが、これまでの伝統風水の古典籍に比べれば、大半の謎解きをすでに終え、ここまで体系的になおかつ詳細に原理と歴史から解説し尽くしている本はなく、ある意味でこれほど容易な専門書もないと自負しています。
もちろん、本書は古典ではないので、現代人のために現代語訳で書かれた読み物であるという体裁にこだわりました。専門用語や人名の漢字にはできるだけふりがなを振るように留意しましたし、文章だけでは伝えにくい部分は、できるだけ多くのイラストを作成し、文中でイラストとともに理解できるような解説を試みました。
また、この手の専門書はモノクロ印刷が一般的なところを、出版社に働きかけ、フルカラー印刷の許可を得ることができました。そのため、ページ数も関連しますが、印刷コスト増により価格は高くなることが予想されます。
【補足】
価格は税別6,800円です。初版の印刷数は1,500部なので、売り切れた後の増刷なども未確定ですし、とてもプレミアム感が強いです。売り切れ前にゲットで!
それでも本書をその内容の価値で判断すれば、「安い!」と思ってもらえるのではないかと私は考えています。
本書は、「風水を学習したい!」という学習意欲が滾たぎる人たちに強く推薦しますが、自分で自分の限界を見定めて、「わからない」「理解できない」「難しい」という自ら生み出した阿鼻叫喚の叫び声の中に埋もれていくのが得意な読者には不向きな本であると断言しておきます。
また、このエピローグの部分は、ブログ「風水山道」(http://blog.yamamichi.org/)で先行公開する予定にしていますので、このエピローグをよく読んで、さらに時間があれば本屋で立ち読みして、本書を買うか買わないか購入を決めていただければ本望です。
そして、縁あって本書を手に取り購入された読者への助言は、次のようなものです。
一度目にあなたが本書を読むとき、あなたは何も理解できていないかもしれません。
二度目にあなたが本書を読むとき、あなたは何かを理解した気になるかもしれません。
三度目にあなたが本書を読むとき、準備は万端でノートに筆記用具、実に多彩な武器をもって本書に臨み、攻略戦と意気込み、自分のためのノートを書き始めるでしょう。
四度目にあなたが本書を読むとき、あなたは自分で作った「マイ玄空飛星学習ノート」に書き漏らしがないか注意深く読み進め始めるでしょう。
五度目にあなたが本書を読むとき、「第7章 鑑定の実例」は、あなたをさらなる飛星派学習の深みに誘導することでしょう。そして今度は「マイ玄空飛星実践ノート」を書き始めるでしょう。
六度目になあたが本書を読むとき、装丁が姿かたちを変えて『擇日万年暦』のように頁がはずれてバラバラになり、もう一冊欲しくなるでしょう。(笑)
さて、長いエピローグとなりましたが、もう一つ補足で「玄空飛星派風水」ということで限定し、日本国内での著書や翻訳書の実情をここに整理します。
1979年 『秘伝元空占術』内藤文穏著
1985年 『奇門天地書別極奥秘訣』「選宅三白法」(巻二)張耀文著
1997年 『必携風水学』Derek Walters著 荒俣宏訳
2004年 『風水必読』曽希著 清水昭子訳
張耀文著の『奇門天地書別極奥秘訣』については、本書の第8章にて詳細に解説していますので、そちらを参照してください。上記四冊については玄空飛星に言及していますが、これらの本から独習によって玄空飛星を習得するには無理があります。
特に内藤文穏著『秘伝元空占術』は「元空」を騙るだけの本であり、陰陽宅のための風水理気技法である玄空飛星が本命卦と共に移動するため吉方位選びのための方位術となり、その移動方位も気学方位の30度60度と、いい加減な代物になっています。
これは完全に日本のオリジナル方位術の気学であり、玄空飛星派風水でも奇門遁甲でもありません。玄空飛星も奇門遁甲も、後天八卦方位を使用し、一つの方位区分は45度です。日本で(私が調べた範囲で)一番初めに「元空」を標榜した本はトンデモ本で、玄空飛星派風水とは関係がない内藤文穏氏のオリジナル九星方位術であるのは残念でなりません。
中国からの風水が日本に伝播されてくると、必ずと言っていいほどこのような愚かな劣化版コピーになりはててしまうのが、これまでの日本の風水史といえるでしょう。
次に時代が変わって、いよいよ独習可能な正統な「玄空飛星」の邦訳と著書が日本国内で販売され始めます。それが次の三冊です。
2008年 『完全定本 風水大全』盧恆立著 山道帰一監訳 島内大乾訳
2012年 『フライング・スター風水術』福田英嗣著
2016年 『フライング・スター風水鑑定術』福田英嗣著
本書にて「玄空飛星」の学習を始める前に、是非読んでおいてほしい本です。それ以外にも玄空飛星に関する本は若干あるようですが、私的な感想としては紹介するに足る内容ではないと思っています。
さて、ここまで日本国内における「玄空飛星」に関連した邦訳書から本書までを取り上げましたが、21世紀に入って、国内ではじめて独習可能な「玄空飛星」の専門書が本書であることはいうまでもありません。
余談ですが、21世紀という時代に意味を込めて、本書の「第7章 鑑定の実例」は
21ケースとなっております。
張耀文先生は、1985年に発刊された『奇門天地書別極奥秘訣』(巻一)の冒頭で「(本書の原文は)中国でもなかなか手に入らぬものとされていました」と述べていますが、この書の原文である『都天撼龍経』(とてんかんりゅうきょうは)、中国のインターネット上でも数年前から公開されており、今では誰でも容易に無料で閲覧でき、しかも手に入れる(ダウンロードする)ことができます。インターネットの普及は1980年代後半に入ってからですが、爆発的に普及しはじめたのは今世紀になってからです。
【補足】
『都天撼龍経』は、欽定四庫全書所収の『遁甲演義』明・程道生撰、故宮珍藏版の『御定奇門寶鑑』でも「奇門源流」の原始の書として引用されています。
詳しくは本書「第8章 玄空飛星派の源流」にて一章を割いて「玄空飛星の技法の源流は奇門遁甲にある」ことを証明しています。
張耀文先生が今でもご健在ならば、当時は秘伝だとか手に入らないとされていた古典資料が、誰でも無料でダウンロードし、手に入れられる今の時代を見て、さぞかし驚くことでしょう。こうやって時代は変わり続けているのです。
言い方を変えれば、過去の秘伝商法のようなものは、もはや通じない時代になっただけでなく、ネットを通じて人々はさまざまなものを比較し、情報を容易にそして周到に手に入れ、なおかつ情報を分析し自分の判断の基準を確立する上で有意義に活かしている時代なのです。
こんな時代に「なかなか手に入らぬもの」などなく、ある意味、本書も時代に要請されて出版された書籍であるという点は否めないのでしょう。
最後に本書を世に問う価値に賛同し、手伝ってくれた多くの有志の方々に、ここで謝辞を述べたいと思います。
本書を世に出すことに賛同し、出版に関してさまざまな便宜をはかってくださった太玄社の今井博央希社長に感謝申し上げます。
二年近い歳月を共におつき合いいただき、本書をできるだけ一般人にも届けたいという想いを形にするべく努力してくれた編集者の初鹿野剛氏とその崇高な出版使命に感動しております。
イラスト点数合計400点近くを粘り強く強い精神力と忍耐力で作成してくれたグラフィックデザイナーの上田壽彦氏に感謝申し上げます。
500ページを超える本書の地獄の文字組作業を最後まで職人気質に繰り言一ついわず仕上げてくれた桜井淳氏に感謝申し上げます。
原書からの漢文を訓読する際に草稿をチェックしてくださった水野杏紀女史に感謝申し上げます。
本書を世に問う以上、私が反社会勢力とならないように本書をリーガルチェックしてくださり、お世話になった弁護士の方々に感謝申し上げます。
本書にて文言を引用する許可を快諾してくださいました鐘義明老師に感謝申し上げます。
本書に快く序文を寄稿してくださいました鍾進添老師、徐芹庭老師、そして調整役をしてくださいました師母に感謝申し上げます。
本書誕生のきっかけをつくり、日本に10年にわたり来日し講座を開き、日本の生徒一同に玄空飛星派風水を授けるのに最も尽力した盧恆立(レイモンド・ロー)老師に感謝申し上げます。日本で主催者として私が一番多く盧恆立老師の講座に参加しており、毎回深き学びがある講座と実践鑑定からは、実に多くの影響を受けました。本書が書きあがる一つの契機となったことに御礼申し上げます。
本書の第二回ゲラ修正作業から必死に目を凝らし誤植を執拗に探し続けてくれた生徒一同(敬称略、以下五十音順)、池上弘康、上田壽彦、岡幸子、川瀬かおり、小谷康子、小園浩、小林芳恵、新宅良規、高木秀之、滝澤孝一、中岳朗、濱本紀子、畠中傅志、本多麻紀、に感謝申し上げます。
本書は風水に興味があり学習意欲のある多くの人たちの手元で役に立つ一書であると信じています。
本書を発刊した目的は、読者に知識を与えることにあります。
知識を得る真の目的は物事の善悪を見抜くために有用であり、本書をマスターした学習者は、プロ以上のプロになれることでしょう。それだけに習得は容易ではなく、本書でも述べましたが、自らの理知的な判断を頼りに有用なもの不要なものを取捨選択し、生活に活かしてほしいと切に願っております。
2016年9月7日白露
松山にて 山道帰一
「エピローグ」は、次の七つのトピックで構成されています。
①伝統というつながり
②虚実
③世界に拡がる伝統風水
④玄空と元空
⑤本書について
⑥風水と私のかかわり
⑦時代は変わって
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