本日、とても怖い目にあってしまいました。
朋友(ポンヨウ)のノエル女史が、「チベット体操」なる怪しい体操をしていたら、ぎっくり腰になり、電話で、
ノエル:「ぎゃぁぁぁ、助けてくりー!
アンタ、ブログで特級気功師とか言ってんだろ!
ホレ、こんな時こそ、何とかしてみんしゃい。
*(ダニエルが聞き取った言語、ダニエル語に翻訳されています。) 」
ダニエル:「エッ、何々!? どうやったら体操して健康になる人が、
ぎっくり腰になっちゃうの!? 全然、わからないんだけど。チベット体操って?」
なるほど、普段運動していない人間には、酷なポーズがも知れません。写真は、チベット体操を調べた時に出てきたもの。
今日は、新宿のサザンタワー ホテルの中華XENLONで飲茶の食い放題を食べながら打ち合わせ。
阿藤さんとFive Arts担当者の三人で、ただひたすら食べ、ダニエルは杏仁豆腐を三つも食べ、すこぶる機嫌が良かったのであった。
ダニエル:「よかよか、ワシが治してやるけん。」
ちょっと運動したら、ぎっくり腰になってしまう朋友ノエルのために、次の打ち合わせで空いた時間を恵比寿で待ち合わせ。
「治療でもしてやるか。」くらいに、考えていたダニエルは、この時、自分がとても不幸な目にあうとは、考えてもいなかった。それは、夏の終わりも近づいた恐怖体験でも言うべきものだった。
いつも、ダニエルを見かけては、「鬼!」、「下品な人間!」と責め立てるノエル女史は、確かにセレブな人で、我々のような人でなしとは、一線を画する人間だということは、ダニエルもお仲間の皆も気づいてることであった。
そう、我々は、セレブと言うより、ヒデブみたいな「北斗の拳」に出てくる下品な漢(オトコ)なのである。
いつものようにギャグのネタにされてしまうノエル女史が、またも、運動していて、ぎっくり腰になるというネタを持ち寄り、そのネタでどんなお寿司でも握ろうかというダニエルの予想に反して、前屈もできないという弱々しい感じで登場した。
そして、歩くのも辛そうなのにウェスティンホテル東京にある「クリーム屋さん」で、クリームが必要だから、先に買いに行くと騒ぐので、致し方なく同行する。
つい最近まで、ウェスティンホテルから歩いて一分のところに住んでいたダニエルにとって、ウェスティンホテルは海外に行く時、リムジンバスを乗る時だけ、行くことを許される神聖な場所であった。
ダニエルにとって、最も近くて遠い高貴で神聖な場所だったのである。
しかし、セレブにとって、ウェスティンホテルなどと言うものは、近所にあるナチュラル・ローソンのような感覚で利用しているのだ。
その日も、ノエルは、天然のキャラを利用し、セレブ・ネタで、ダニエルの自尊心を攻撃し始めた。
ノエル:「帰一さん、ウェスティンホテルの一番上に行ったことがあります?」
ダニエル:「ん、そういえばないな。普通に入れるの?」
ノエル:「あ、あそこは、エグゼクティブルームに宿泊している人だけは入れるんだったわ。」
ダニエル:「・・・。あははは、そういえばまだ行った事がないや。」
そして、ダニエルはリムジンバスを乗る時以外に来てはならない、この神聖な聖地に足を踏み入れただけではなく、謎の「クリーム屋さん」まで、同行させられ、四階にある「スパ&ウェルネス」の前まで来た時に、足がすくんでいた。
ダニエル:「オ、オレは、ここで待っているよ。」
エレベーターのそばから離れようとしないダニエルに対して、ノエルが勝ち誇った笑顔を見せた。それは、勝ち組と言われるセレブが持つ特有のもので、ぼくらがマネしようとしても出来ることではない。そう、そこには別の「鬼」がいた。
ただ、自分に負けたくなかった。そして、何よりも、セレブに負けたくなかった。
ここは、癒しのスパのはずだが、そのゴージャスな入り口と待合室に圧倒され、ぼくは素早く身なりを整えた。
ダニエル:「今日は、紳士服の青山の店員にしつこく進められて、
買わされてしまった二枚で半額にならない、
ちょっとリッチなスーツを着てるから、大丈夫だ。
大丈夫、オレならやれるはず。」
そう、朋友のイスカンダルさんに勧められた上下で15,000円のオーダースーツをあの時、買っていればと、軽く後悔もした。
今日着ていたこのスーツは、「どこかダブダブとしていて、体型にあっていない気がする。」普段、騙し騙ししていた自分の本当の想いが、この癒しの空間「スパ&ウェルネス」の待合室で座っていると溢れ出して来た。
ぼくは、なんだかよくわからないし、どこに塗るかも不明な「クリーム」なるものをノエルが選んでいる間、心をリセットして瞑想でもしようかと思った時は、既に時遅しだった。
ノエルは、その時のことを述懐して、こう述べている。
ノエル:「後ろから見たダニエルは、肩がこわばっていて、
まるで、憑き物でも落ちたかのように静かで、緊張していました。
サロンで除霊され、猫に変身したダニエルに大ウケでした。」
そして、ノエルは、店の中で散々ぼくを笑いものにし、椅子に座ると本当に腹を抱えて笑い始めたのでした。そして、店員さんは、動揺し、間違えたクリームを持って来てしまう始末です。
別に、神聖な場所、セレブな空間とセレブな店員やノエルに除霊されたのではありません。自分にヤラレたのです。
さらに、トドメとばかりに店員は、そのセレブでゴージャスな待合室で、小さく縮こまり、ベーカー(Baker)社製と思われる超高級家具の椅子で、プルプル振るえ、除霊されている最中のダニエルをじっと見つめ始めた。
その時、ダニエルも、心の準備をしなくてはならないと覚悟したのです。
もし、この会員制と思われるスパで、この青山のスーツを買わされた様に、何か買わなくてはならなくなったり、スパサービスを勧められたら、どうしよう?クリームの名前とか知らないけれど、どうしよう?台湾の経絡按摩しかしらないけれど、どうしよう?
その時、走馬灯のように、ダニエルには、色々なことが頭に過ぎったのでした。
オレは、そんな高級クリーム、どこに塗るのか、何が良いんだかも何もワカラナイ。
ダニエル:「よし、もし、こいつがオレに何のクリームが欲しいかとか、
試してみたいか聞いてきたら、
とりあえず、"NASAで開発されたクリームください"とか言おう。」
しかし、この覚悟が試されることなく。ぼくは、除霊され、子猫のように、この店を後にした。
その後、ノエルがそこで買った全身用クリームが15,000円もすることを聞き、ぼくは、また、イスカンダルさんと共に、お小遣いをためて買おうと誓いあった上下で15,000円のオーダースーツのことを深く想っていた。
そして、先にそのスーツを手に入れたイスカンダルさんは、ぼくに優しく微笑み、「パンツが二枚もついていました。」と、喜んでいたことを思い出した。
それに比べ、ノエルは、ぼくのリムジンバスを乗る時以外は近づいてもいけないというルールを平然と破り、ぼくの聖地を蹂躙し、高級なクリームをコンビニで、アイスクリームでも買うかのように手に入れてしまう。
ぼくは、兄貴が寒い冬の日に、手袋もなく、自転車で通学していたため、アカギレだらけになった手にお母さんから借りたメンソレータムを手に塗っていたのを思わず思い出してしまった。
世の中の格差は大きい。当時、もしぼくにお小遣いが少しでも多くあったら、兄貴にこんなクリームを買ってあげたかった。でも、もうそんな兄貴はいない。もちろん、当時、小学生のオレにお小遣いはなく、お金が欲しい時は、符を書いて、お金を拾ったりしていた。
ちなみに、その後、一階の喫茶店で、ノエルのぎっくり腰を治療してあげた。
好奇心旺盛にぼくの能力を目を輝かせながら見守るこの幸せ者に、ぼくが修羅場で鍛え上げてきた決して表の人々が見ることが出来ない壮絶な世界を生き抜いたものだけに与えられるNASAの科学的なクリームでも癒せない、もっと自然の根源に立ち返る癒しの力を見せてあげることにした。
それは、五術の「医」でもなければ「山」にも属さない力だ。というのも、そこには記号類型論とも呼ぶものを一切必要としない世界だからだ。
すぐ後ろの席に、芸能人のオセロが座っているのを芸能人好きなノエルが発見して喜んでいた。
ノエルに軽く目をつむるように、指示する。ぼくは、ただ外部にある気を取り込み始める。意念や観想もいらない。自分の内気を消耗するのを最小限に抑える。
玉沈関を気が通過する頃には、その両側に静電気のように気が集まるのをザワザワと感じる。
ゆっくりとゆっくりと気を回す。印堂を気が通過する頃には、既に回路にスイッチが入り対象を捉えている。後は照準を合わせ、溜めたエネルギーを透過させる。外部に解き放たられる瞬間。脳内の電圧とでも言う感覚が低下する。
太極拳の達人が、相手に触れずに熟練された推手により、イメージする前に動き出す両の手が相手の五臓を触れずに破壊するように、医療の現場で練り上げ、つくりあげたぼくの布気が、ノエルの腰にある患部を捉える。
筋肉が緊張し、血が鬱血し、腫れぼったくなった腰部に触れずに、手を伸ばすこともなく、手を広げることもなく、気を相手の身体に行き渡らせる。距離は一メートル弱だ。これが、十メートル以上ならば、気での治療は不可能になる。
印堂から照射される光を相手の身体に送り込む、五分も必要がなかった。
周りの人に治療していることも気づかれずに、治療は終わる。
さっきまで、歩くのも辛そうで前屈など痛みでできなかったノエルが、すぐに動き出し、早速前屈まで始める始末。
ノエルからの感謝のメール。
ノエル:「お陰さまで、身体のほうも、痛みがとれ、随分楽に。
なんと、前屈ができるまでに回復。すごい。
いつも本当にどうもありがとう。感謝・感謝です・・・」
★ノエル!感謝しているなら、自分でポストしなさい。
ノエルと別れ、次の現場、千駄ヶ谷に向かうダニエル。事件は現場で起きている。しかし、今日は、これくらいではすまない、ハードな一日だった。
この後の、「交霊1」に続く。
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