読者お待ちかねの仙道シリーズです。先の仙人篇の続きではないのでご安心を。今回は、房中術の実践家にして、大先輩である小説家の長村逸想氏から学んだことを中心にお話しします。
仙道の世界では、「重秘」と呼ばれる表に漏らせない情報が甚だ多く、学者の見当違いの研究も手伝って、その全貌がまったく世間で知られていません。
ちなみに、何故「重秘」なるものが、仙道世界に存在するかといいますと、それは、エントロピーの法則にも似ています。つまり、情報量がより平均化するときの弊害を仙道家たちは、膨大な時間の経験則から理解していますし、それは引き継がれているのです。
つまり、社会秩序のあり方や、平均寿命から雇用問題まで、様々な社会でのあり方と、それに影響を及ぼす情報を持っていたとしても、無闇に公開などできないのです。
今回は、栽接法と呼ばれる仙道の技法についてですが、「重秘」については、そこまでで話を途中カットします。
栽接法とは、房中術とも呼ばれ、世間体的には、あまり風評が思わしくないものですが、仙道家たちは、一つの「生命力」「生殖能力」の問題として、房中術をとらえています。平たく言えば、房中術とはたなんる性愛術ではなく、養生(養陰、養陽)による延命長寿の方法であるということです。
また、仙道の技法として伝わる房中術と世間で知られているものは、まったく別物といっても過言ではないでしょう。そもそも、仙道の秘密は世間で知られることがほとんどないです。
たとえば、清浄派における修練のゴールの一つの形に「馬陰蔵相」と呼ばれるものがあります。それは、男性性器が使い物にならなくなり、生殖能力がなくなってしまうことを意味します。
女性の場合は、老女がこの技法(術)に精通した場合、月経閉止期(女性が50歳前後になって月経のとまる時期)を過ぎていても、月経がまた戻ります。また、その後に閉じますが。
逆に、月経がまだある若い女性は、月経が閉止期をむかえます。
つまり、仙道における修練の完成した姿の一つの形とは、修練のスタイル(流派)如何によっては「生殖能力」がなくなることに繋がる場合もあります。その効能は、・・・重秘。
では、何故このようなことが起こるのかといいますと、仙道の秘密における答えの一つとして「内分泌の変化」にあります。
内分泌器とは、ホルモンを分泌する器官のことであり、その特徴は、以下のとおりである。
<内分泌器の特徴>
・ホルモンを分泌する細胞が存在する。
・分泌したホルモンは血液中に溶け出して全身を回る。
・内分泌器官内に血管が発達している。
・ホルモンの分泌量をそのときの体にあわせた量に調節する。
・内分泌器官そのものも別のホルモンの作用を受ける。
*ホルモンを分泌する腺なので、内分泌腺ともいう。
*ホルモン(ドイツ語:Hormon)とは、動物の体内において、ある決まった器官で合成・分泌され、体液(血液)を通して体内を循環し、別の決まった器官でその効果を発揮する生理活性物質のこと。
仙道の秘密は、内分泌腺にあり、仙道をすることで内分泌器からつくられるホルモンの分泌量が変わり、人体に著しい変化が現れる。つまり、「内分泌の変化」というのが、我々の「仙道」に対する医学的な定義であります。
そして、今回のテーマとなる仙道における術の一つ「栽接法(房中術)」を体系の中から見ると、以下の図表のようになります。それは「長生不老」と呼ばれる長命を保つことを目的とした技法であるということです。
|―法術(意念科学)
道術―|
| |―清浄派(丹道)――――― 北 派
|―長生不老―― | |―南 派
|―栽接派―|―男女双修 ―|―東 派
(房中術) |―男採陰補陽― 三峯派
|―女採陽補陰
*上図は、あくまで栽接法を基準に分類。つまり、栽接法の術を持つか持たないかの分類であり、これらの流派がもっぱら栽接法に精を出しているわけではない。
ここで、「栽接法(房中術)」とは、その組み合わせにより、三系統の方法に分かれ、それはそのまま流派(スタイル)の違いに繋がります。
ちなみに、中国後漢の章帝の時に班固、班昭らによって編纂された前漢のことを記した歴史書『漢書』芸文志には、「房中八家百八十六巻」が挙げられている。
現存している日本最古の医学にかんする書物『医心方』にも、房中術の典籍である『素女経』あるいは『玉房秘訣』からの引用が多々見られます。
日本には、漢代からの房中術の書が数多く保存されており、中国の清朝末の葉徳輝(1864-1927)という蔵書家が日本に来て、中国では滅びた書があることに驚喜し、多くの書を持ち帰って中国で『雙梅景闇叢書』という名前で清朝光緒三十三年 (1907)に公刊しました。
その中には、『洞玄子』『素女経』『素女方』『玉房秘訣』『天地陰陽交歓大楽賦』なども収められています。
四千年前(少なくとも二千年前の漢代)から、現代の性科学に匹敵する合理的内容が記載されているのは、専門家たちの驚くところです。
栽接派と呼ばれる房中術を行わずに、房中術の目的である「生命力」を手に入れる流派(スタイル)もあります。北派と呼ばれる流派で、パートナーを伴わないことから、「男性単修法」「女性単修法」とも呼ばれる。
北派については、蜂屋邦夫氏の『金代道教の研究 王重陽と馬丹陽』(汲古書院 1992)に詳しいです。
王重陽(1112-1170)は、道教の一派、全真教(北宗)の開祖で、その弟子の全真七子と呼ばれる七人の弟子は非常に有名です。
また、その七子の弟子の中でも唯一の女性であった孫不二の書き上げた 『孫不二女丹詩』などは、後世、女性単修の奥義書ともされるようになったが、内涵(内側)の人間しか、読んでもわからない五言古詩となっている。
ちなみに、張明澄先生は、孫不二自ら注釈を加えた孫不二の手書きの資料を大事に持っていた。我々内涵(内側)の東派の人間は、性別が男性でも孫不二の内丹法は必需だった。
それには、孫不二の内丹法は、ここまでわかりやすく書くかというくらい、懇切丁寧な注釈が入っているのである。ただ、その全貌は重秘です。原文などいくら公開しても構わない。誰も読めないのだから(笑)。
長村逸想氏:「北派にみられる清浄派には、多くの弊害が見られる。」
という見方もあります。それは、修練の失敗を意味し、俗に言う「走火入魔」と呼ばれるもので、今の脳溢血などに近い概念を持つ。 青洟(ばな)が垂れてきたり、そのまま精神が崩壊したりと、危険なリスクがたくさんあるのが、清浄派の修練である。
では、栽接派が房中術を伴い、内分泌を変化させるのに対して、清浄派ではどのように長生術の定義である「内分泌の変化」を起こすかといえば、血圧の変動に答えがある。重秘
房中術で、健康を保つことはたやすいが、三峯派にみられる男採陰補陽や、女採陽補陰のように、男が女から質量保存の法則にも似た生命力を奪う(男性本位)ことや、女が男から生命力を奪う(女性本位)こと、これらは、搾取みたいなもので、私はお勧めしない。
外部から見るだけではわからないが、清浄派の実践家は、あまりにもストイックな生活と孤独を強いられる。孤高の人の世界なのである。
長村逸想氏は、男採陰補陽を実践し、自分の貧血からくる冷え性が治ってしまったが、今度は奥様が冷え性になってしまい気の毒なので、男採陰補陽の修練を断念した。
漢(オトコ)だったら、あくまでストイックな丹道こそ、王道だろう。たとえ、その結果、青洟が垂れてバカになったり、脳溢血で若くしてくたばっても、修練家に「後悔」という二文字はない。そして、自分に負けないで欲しい!
むしろ、一人でストイックな自分のルールに従う修練家たちには、「バカ」という二文字こそが相応しい(笑)。ただし、青ばなを垂らす境地がゴールだったら、笑えないだろう。
重秘なるものが存在して、情報を開示しないのは、良き指導者がいなくて、独習したものが、そのようなゴールをむかえるのを防ぐためのものでもある。
<関係ページ>
にほんブログ村ランキング